作ろう、遊ぼう、調べよう

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授業後の「特別なランチタイム」

菊地 奈緒美

『アウグスブルクこども日本語ひろば』主宰の菊地奈緒美さんに、親子で楽しめる教室活動後のアクティビティーをご紹介いただきました。


みなさん、こんにちは!

日本語を学ぶ場に、楽しみに来てもらえるように・・・ そんな願いを込めて、2024年から「アウクスブルクこども日本語ひろば」を始めました。

アウクスブルクには0歳から4歳を対象としたプレイグループはありますが、これまで小学生向けの教室はありませんでした。私自身も小学生の息子を育てる中で感じたのですが、小学生になると学校や習い事、友達との約束で忙しくなり、日本語と少しずつ疎遠になってしまうことがあります。それでも、日本語を忘れてしまうのはやっぱり寂しい…。そこで、座学だけでなく様々な活動や遊びを取り入れ、現地校での生活も大切にしながら、ゆるやかに日本語に親しめる場所をつくろう!と、友人と一緒にこの教室を立ち上げました。

お昼から始まる特別な時間

私たちの教室では午前10時から12時まで授業をしていますが、実はその後、12時から「お楽しみの時間」が始まります。会場として利用しているのは、地域のMehrgenerationhaus(多世代ハウス)という施設です。小学校の学童としても使われていて、キッチンもあり、50人以上が入れる広々とした施設で、中庭には公園もあります。この環境を活かし、12時からは教室の参加家族に限らず、アウクスブルクや周辺に住む「日本語のルーツを持つ人たち」に開放しています。

世代を超えて集まり、ご飯を食べたりお茶を飲みながらおしゃべりしたり・・・そんな何気ない時間が、日本語に触れる機会を自然に増やしていると実感しています。また、この時間を設けることで、日本語学習に抵抗があって教室には通わない子どもたちも気軽に集まれるようになりました。家庭であまり日本語を話さない子どもたちにとっても、心地よく参加できる場所になれば嬉しいです。

お昼からのいろいろなイベント

今までこのようなイベントを企画しました。

★ フリーマーケット

「子どもの不要品や日本の書籍を譲り合える場がほしい」という声から始めた企画です。たくさんの品物が集まり、子どもたちは日本の絵本やおもちゃに興味津々。新しい出会いの場にもなり、今後も続けていきたいイベントです。

★ ボードゲーム大会

ミュンヘンに住むボードゲームに詳しい親子が遊びに来てくれ、みんなでボードゲーム大会をしました。日本語でルールを理解したり、新しい語彙に触れたりと、とても良い学びの機会になりました。

★ オリジナルお弁当作り

キッチンを最大限に活用して、子どもたちが自分で考えた「オリジナル弁当」を作り、みんなで一緒に食べました。

★ 東北「芋煮会」

私と主人の出身地・東北の文化を紹介するために、秋に芋煮会を企画しました。

① 地域の人々をつなぐ「芋煮」

秋になると、山形や宮城を中心に「芋煮会」という行事が河原やバーベキュー場などで行われます。里芋や根菜、こんにゃくや肉を醤油または味噌で煮込む芋煮は、秋のひんやりした空気の中で食べると体がぽかぽか温まります。友人や家族、会社の同僚、そして地域の人々と、みんなでわいわい囲む、そんな雰囲気をアウクスブルクの日本語ルーツを持つ方とも共有したいと思いました。山形では主に醤油、宮城では味噌で作られることを紹介し、みんなに食べ比べてもらいました。里芋を初めて食べる子どももいて、具材にも大きな興味を持っていました。

② いつもの昔話を「東北弁」で聞こう

お腹が満たされたあとは、東北弁での読み聞かせを実施しました。子どもたちが前に集まり、日本昔話のひとつを岩手南部の方言で読みました。子どもたちは目をまん丸にして、いつもと違う響きを楽しんでいました。

③ ご当地シリーズへ発展

アウクスブルクには、広島、京都、愛知、新潟など、さまざまな地域から来た方がいます。各地のご当地の味やことばを紹介する活動があれば、きっと面白いだろうと考えています。また、子どもたちにとっては親戚や家族のルーツを知るきっかけにもなります。このように「味」と「ことば」の両方を通して、日本のいろいろな地域を体験できる機会を、これからもたくさん作っていきたいです。

さいごに

幼少期はプレイグループや読み聞かせ会など、日本語に触れる場が比較的多くありますが、子どもが成長するにつれ、みんなで集まるのは意外と難しくなります。だからこそ、「日本語で学び、思いきり遊べる“公式な場”」を作ることが大切だと考えています。ここが、気軽に集まれる場所となり、子どもたちが「日本語って楽しい!」と思えるきっかけともなり、彼らの人生がより豊かになれば嬉しいです。そして何より、このランチタイムを一番楽しみにしているのは・・・実は、私をはじめとする大人たちだったりします。

 


菊地 奈緒美 (KIKUCHI Naomi)

新潟大学卒業。メディア文学を学んでいた時、多くの留学生に出会い、日本語教育に強い関心を持ち、その道に進もうと決意する。卒業後、企業に勤めながら日本語教師養成講座を修了し、京都にある日本語学校の常勤教師となる。その後、日本人の夫の夢である「ドイツで働く」ことを実現するために移住。7歳の息子と2歳の娘はドイツ生まれ。息子が小学生になるタイミングで、友人と共にこの教室を立ち上げた。

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