複言語を生きよう

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ティーンズ座談会 ―ドイツと日本で生きる―part2

三輪壮舞 日下ハンナ ツムトーベル明日香 白井ヤン颯

2021年9月18日、ドイツのギムナジウム(Gymnasium, 主に大学への進学を希望する子どもたちが進学する中高一貫教育の学校)最終学年に在籍している17、18歳の複言語ティーンズ4人を招いて、オンライン座談会を開きました。自分の中のことばについて、日本や日本語への思い、日本語補習授業校(以下、補習校)での体験、独日の学校生活の違い、ドイツで日本ルーツを持ちながら暮らすことなど、色々なテーマについて語ってもらいました。(前回の記事はこちら

接続からおちてしまったはやとくんの再入室を待ちながら、座談会は新しいテーマへ展開。

「ドイツと日本の学校生活の違い」

ゆかり:みんな、ドイツと日本の学校の生活で何か違いや難しさを感じたことはありますか。よかったらハンナちゃんから教えてください。

ハンナ:はい。えっと、自分が日本に行く時によくすごい違いを感じてたので。他のみんなはどうなのかなってちょっと知りたくて。自分は何回か日本の学校に体験入学して楽しかったんですけど、住みたくないなってすごい思わせられてしまって。なんかすごい集団を大切にするところとか、その…先生が一方的に教えてるだけで、こう、後ろの方ではみんな寝てるしみたいな…なんかこう授業に活気があまりなくて 。私一人だけすごいバンバン手をあげて、最後の方はなんか恥ずかしくなってきて。日本の友達と喋ってる時に感じたのが、みんな自分の意見をしっかりと伝えられないって言うか…空気を読むことしか考えてなさすぎて、自分の意見を言うことが少ないし、物事を疑問に思うことに慣れてないっていうのがすごいあって。ディベートとかする時も同じようなものしか言わなくて、しかもそこまで疑問に思ってないから何もディベートすることがないみたいな感じで終わってしまって。日本にいるとなんか心地が悪い時があります。昔、すごいなんか日本に住みたかったんですけど、今は全く思わなくなってしまって。

ゆかり:それは、例えば 補習校で一緒になる日本の子とかと話してる時は感じますか?

ハンナ:全く感じないです。こっちで育ってるだけあって疑問に思うことに慣れてますし。先生が言ってることでもちゃんと疑問に思うことをこっちでは習うんですけれど、日本ではもう先生がそう言ったらもうそれが正しいみたいな感じになってて。私、なんか言わないと気が済まないので、日本にはちょっと向いてないって家族にも言われます。(笑)

はやと、戻ってくる)

ゆかり:はい、はやとくんお帰りなさい。今、ハンナちゃんが、日本の学校に行った時に違和感を感じるっていうところの話をしてくれて。あすかちゃんもそうまくんも頷きながら聞いてました。はやとくんもそういうことがあれば、教えてください。

はやと: はい、この前…1年前に留学しました。日本の高校に入って、すごい田舎の高校で。まぁ、授業は、なんか、ほとんど先生だけが喋ってて。ドイツはみんなでディスカッションするみたいな感じで。僕、なんでみんな、手あげないんだろうとかずっと疑問に思っていて。ドイツに帰ってきて、もうみんな手を挙げてて、すごい。なんかびっくりしました。

ゆかり:びっくり!ハンナちゃんの話を聞いてないのに、はやと君がほとんど同じことを言ったから。(笑)やっぱり同じように感じるんだね。あすかちゃんとそうま君は日本の学校に少しでも行った経験ってありますか?

あすか:私は一回だけ。中学校に行ったら英語のレッスンがとても…どういうの?おかしかった。ドイツで学校で言葉を習うと、いっぱい喋るでしょ?でも、日本ではいっぱい読んで、先生を聞いて、だけ。私にとっては、ちょっとまずかった。(笑)でも、私にとってもmündliche Beteiligung(編集者注:口頭での参加、話すこと)は、とても大切なものですから、はやととハンナちゃんの(意見)とてもよく分かります。

そうま:僕は、あの、3人と違って日本に帰った回数も、日本の学校に通ったこともほぼなくて、4年生ぐらいの時に2週間、体験入学したんですけど、唯一覚えていることがドイツの小学校の鉛筆ケース、開けるやつ(編者注:ファスナーを開けると観音開きのように開く大きめの筆箱)がすごいウケて。あまり、こう、子ども達と話して、その反応はよくわからなかったです。でも、一回、僕の学校に日本から留学してきた人がいて、話してる時に、なんだろう、ちょっと考え方とかが違うなぁっていうのがあって…。どういう時だったか、もうわかんないんですけど。ちょっと考え方が狭い、ここと比べて、ちょっと狭いかなって。例えば、ここなら、いろんな考え方があるのが普通だけど、一つの考え方しかあまり知らなくて、それ以外が受け入れられないとか。そういうのが少しはあったの覚えてます。

ゆかり:うんうん、確かに。ヨーロッパってドイツにいてもいろんな国の人が混ざってるから考え方が違って当たり前みたいな感じだけれど。ずっと日本に育っていると周りがだいたい同じって感じるのかも。私の話をすると、私は、みんなと真逆で日本と中国で学校に行った後にドイツのRealschule(編集者注:6年制の実科学校)に来たんだけど、中国でも日本でも先生の話を聞く子がいい子でした。ディベートもディスカッションもしないし、「はい、はい」って言ってるのがいい子だったから、ドイツに来て、学校で「あなたはどう思いますか」って聞かれた時、「はい、いいと思います」って言ってたら、「あなたは参加していない」ってすごい怒られて。自分の意見を持たなきゃいけないんだって初めて知ったのがドイツの学校に入った時だった。

そうま:僕は日本の学校って、何して、どんな1日で、授業どんな感じだったか、を経験したことないからよく分かんなくて。

ハンナ:結構静かです。あの、先生が黒板に、なんか、色々書いて、みんな、ノーと書いて、それか、教科書立ててその裏で寝て。私、席が一番後ろだったから、しかも一番端っこだったから、全部見えて。なんかめちゃ寝てると思いながら笑ってたのを覚えてる。英語はあすかちゃんの言ったように、ある意味、悪い意味でびっくりした。

 

「自分の中にある日本」

ゆかり:みんなは、自分の中に日本があるなぁと感じる事ってありますか。

はやと:ちょっと難しい。多分、僕は、ドイツ人みたいにエネルギッシュに何か話すのとか、あんまりすごい大人数で自分の話ばっかりするみたいな、そういうのはあんまりできないなって感じるから、そういうところでなんか空気読んじゃうみたいな。人の話を聞くみたいな、そういう一面が出てくるって感じです。

そうま:僕も多分、その、ちょっと日本人みたいに、空気を読む人と話すのは、別に嫌いじゃないけど、よく、大人数だとめんどくさいから、まあ、人の話だけ聞いて「うんうん」とか、そういうのもあったり。でも逆に、よく言われるのが、好きな食べ物とか「すごい日本人みたいだね」とか、日本の食べ物たくさん食べるので、結局そういうのは、すごく日本人だっていうところありますね。

ハンナ:私も、なんか、こう、空気を読むところ。こっちの人といる時に、なんかちょっと空気読みすぎたなと思う時があったり。よく人に言われるのが、気を使いすぎる時がある。気配りをしてしまう。例えば、友達の家でお皿が残ってたらそれをすぐに一緒に片付けてしまうとか。あと、そうまが言ったように食べ物。私、好みが結構、渋いので。例えば、小学校の頃から抹茶がすごい好きで、濃茶がすごい好きなんですよ。濃茶ってすごい苦いんですけど、それが大好き。おしることか「すごい渋い」ってよく言われる。なんか日本人だなって思う時もあります。

あすか:私は日本の食べ物はとても大好き。私のお父さんがドイツの食べ物を作ったら・・・。(笑)私は子供の時日本の食べ物だけを食べたから。(笑)日本のお菓子もドイツのお菓子より好きです。

ゆかり: やっぱりみんな、食べ物はそうなんだね。私も、例えばイタリアとかスペインとかに旅行に行くと、最初は食べ物、美味しいんだけど、最後の方でやっぱり醤油ベースの何かが食べたくなっちゃう

あすか:ご飯が食べたい。(笑)

 

「自分は何人?!」

ゆかり:みんな何パーセントぐらい日本だと思う ?(笑)

そうま:多分行く場所によって変わる気がして。自分が日本人だっていうのは全然考えない時って、やっぱ学校にいる時。その時は多分パーセンテージで言えば9割ドイツ人。家に帰れば結構、まあ、7割日本人だったり。

はやと:僕は、あの、ドイツの学校にいると100%ドイツ人って自分で思ってるんだけど、まあ、でも、家にいると30%か40%ぐらい、日本人っていう感覚です。

あすか:私は、10%だけと思う。日本語はよく喋れなくて食べ物だけ。(笑)でも、まあ、お母さんが日本人だから、それだけ。あの、でも、それは何か、私にとって残念なこと。

ゆかり:なるほど。ハンナちゃんは?

ハンナ:私は、多分、ドイツの学校に行ったら80%ドイツ人で、ドイツの家にいるときはやっぱり日本語のパーセンテージ50%なんですよね。ママの彼氏がドイツ人なので、なんか半々になって、ちょっと、こう、綺麗に上手に分担される感じなんですけど。日本の家族と過ごしてると、ドイツ人70%な気がしてしまって。物事に対する意見がよく、すごい違うので、そこでは自分は日本人じゃないなって思うことが多いので。日本にいる時は、それこそドイツ人60%、70%かなと思います。

ゆかり:日本にいるとちょっと違うなって感じるってことだよね。みんな、場面によって違うんだね、感じ方が。

 

「日本に対するイメージについて思うこと」

ゆかり: ここ数年でアジアの文化が世界に広がってきて、日本が普通に受け入れられているけど、「日本と言えばアニメとか J-POP」 のようなステレオタイプが生まれてしまっているかもしれません。そんなことを感じた経験はありますか。

あすか:うん、ちょっとマンガやアニメと音楽だけがとても有名、人気だから、日本の文化が、なんか、それだけと思っている人がいるから…、それがちょっと残念。

ゆかり:じゃあ、日本のどんな文化的なところを知ってもらいたいって思いますか。

あすか:日本人のMentalität?メンタリティー?精神と、神道の考え方を、とてもすてきなものですから、そういうものを、もっと知ってもらいたい。

はやと:僕のところは、あんまりみんな日本に興味ないって感じです。アニメ見る人とかも少なくて。 J-POP とか聞く人、全然いないし、なんかもっと興味を持ってくださいって感じ。(笑)「こんなにいいところあるんだよ、日本」って、思うところはある。やっぱり日本人が好きです、僕は。空気を読む文化とか。こういうところでは、空気を読んでくれるっていうのも、いい一面として感じるってことだね、はい。(笑)

ハンナ:こっちってみんな寿司が好きじゃないですか。日本人って毎日寿司食べてるのって聞かれると…。こっちみたいに毎日ソーセージを食べてるわけじゃなくて、お寿司はただ単に文化としてあるだけであって、食事も、もっとたくさんあるのに、なんでもっとこう色々と知っててくれないのかなって。もう「日本=寿司」しかなくてそれがすごい残念だなって思う。

ゆかり:そうまくん、どうですか?

そうま:僕はどっちかって言うと、日本の好きなとこが、日本に興味がある人とあんまり変わんなくて。ポップカルチャーとか建物とか街並みとか。よくネットとかで、日本をパラダイスみたいに見てて、将来あそこに住めば最高の人生が送れるみたいな、そういうのをよく見て…、なんだろう…、それだけで日本に住みたいっていう意思ができちゃうのも、なんか変だなぁとも思ったりして。だって日本だって問題とか色々あるわけで。例えば、痴漢の率とかもすごく多くて、わざわざ女性専用の電車と分けないといけないほど悪かったり。同性愛の結婚とかも駄目だったり。経済的にも多分色々な問題があるんだろうけど、すごい oberflächlich に(編集者注:表面的に)その国を見てます、みたいなのがすごい嫌だなっていうのはある。

ゆかり:なるほどね。

 

「日本に住んでみたい?」

ゆかり:ハンナちゃんは(補習校の話のときに)もう言ってくれたけど、将来的に日本って住んでみたい住みたいって思う国ですか。
(4人とも沈黙)

ハンナ:微妙ですよね。

あすか:私は日本に住みたくないけど、もう1回ちゃんとそこに暮らしたい。学校の後から1年くらい日本に行って、ちゃんと全部を見て生活したい。 でも、その後、日本を、 なんかUrlaubsort(編集者注:バカンス先)みたいに・・・

ゆかり:訪問する?

あすか:はい。

はやと:僕は多分あまり住みたくはないです。住むとなったら、都会だとあんまり緑とかもドイツみたいに多くないし。フリータイムもちょっとスポーツしたり過ごすのはドイツの方が簡単かなと思うし。僕、日本人が好きって言いましたけどやっぱり多分気が合うのはドイツ人。友達もいるし、ドイツの方が住みやすいと思います。

そうま:えっと、基本的に僕も 日本に住む気はあんまりなくって、数ヶ月だけ行ってみて、そこに短期間でも暮らすのはどういう感じなのかを知ってみたいです。多分、文化的にあんまり人と合わない気がして。今のとこ、やりたいことは、日本には特にないと思うので。

 

この後、話はさらに自分たちや社会のこれからについて熱くなりました。次回をお楽しみに!

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