ことばと本

ことばと本

親子で顔を見合わせるあの瞬間を探して ~手軽な娯楽としての絵本~

齋藤あずさ

「趣味は何ですか。」「読書です。」

なんて日本語会話を今までに何度してきたでしょうか。日本語教師を始めて約20年。このフレーズは長年、無趣味な私のウソでした。(笑)

そんな私が「絵本の世界」にはまったのは、文庫活動の代表をやってくれないか?という知人からの依頼がきっかけでした。非常に忙しい時期だったので、やんわりと断っていましたが、何度か頼まれるうちに、断りきれず、あれよあれよという間に、自宅に絵本200冊ほどが運び込まれてきました。「環境が人を変える」とはよく言いますが、身近にたくさんの絵本があるという環境は、夕食後テラスで絵本を読むという習慣を自然と生み、息子も私も気付いたら、絵本の虜になっていました。

本はたまに読む程度だった私が、今や文庫活動を広げるまでになった一番の要因は、やはり単純に「子どもと一緒に笑える絵本」に出会ったからだと思います。日本語絵本は、本当に種類がたくさんあり、それこそ何を選んでいいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。

「絵本の読み聞かせはあまりしていない」「何から始めたらいいか分からない」と思っていらっしゃる方に、まずおすすめしたいのは、「ありえない世界のオチのあるお話」です。実際には体験しようのない非現実的な世界の話を読みながら、次の展開を想像して当てて喜んだり、想像を超えるオチに顔を見合わせて笑う瞬間!私たちはこの瞬間のために、絵本を読み続けています。結末を楽しみにするのは、映画や小説などと同じことなのですが、絵本はなんと約5分で完結!しかも、世界で一番愛する我が子とその楽しさを一緒に味わえるのです。こんな手軽な娯楽は他にありません!

そんな私たち親子がおすすめする「ありえない世界のオチのあるお話」をいくつか紹介します。是非こちらの本を探して読んでみてください。そして、読むときには、大人が先に読んで練習などせず、親子でいっしょに最初の1回目を楽しんでください!

サトウ マサノリ・作絵 『おっとあぶない』パイ インターナショナル

シゲタサヤカ・作絵『おにじゃないよ おにぎりだよ』 えほんの杜

大塚 健太・作/ 柴田 ケイコ・絵『おにゃけ』パイ インターナショナル

日野 十成・作/ 斎藤 隆夫・絵『かえるをのんだ ととさん』福音館書店

マイク サーラー・作/ ジェリー ジョイナー・絵/ 岸田衿子・訳『わゴムはどのくらいのびるかしら?』ほるぷ出版

土屋富士夫 ・作絵『もっちゃう もっちゃう もうもっちゃう』徳間書店

 

絵本1冊を読む、ほんの数分。

最後のオチに親子で「えー!」と顔を見合わせるあの瞬間を是非、探し続けてください。きっと、日本語の学びのためにとかではなく、親子の幸せのためにちょっとした役割を担ってくれるようになると思います。


齋藤あずさ(SAITO Azusa)さん

イタリア・ローマ在住 文化協会「にほんごもっと」代表。国際児童文庫協会ローマりんご文庫代表。小学男児の母。専門は、日本語教育。ローマ日本文化会館、ナポリ東洋大学、伊日財団などで、外国人向けの日本語講座に従事すると同時に、補習授業校にて子どもたちの言葉の教育​に従事。興味関心は自ずと「継承日本語教育」へ。文庫活動を始めて、絵本の魅力にはまり中。

【2つのリレー質問】

① ずばり一言、本は「私」にとって?

子どもといっしょに楽しめる一番手軽な娯楽

② 記憶に鮮明に残っている子ども時代の一冊は?

『はれときどきぶた』突拍子もないタイトルと、その内容にあったおかしいイラストが印象に残っていて、3●年を経て、息子にも読み聞かせして、一緒に笑った時、何とも言えない幸せを感じました。

矢玉四郎・作絵『はれときどきぶた』岩崎書店

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