2025年2月7日
「BraWo!日本-親子クラブ」の上野フックス玲さんは、ブラウンシュヴァイクと近郊に住む日本人コミュニティの方たちと協力しながら、子どもたちが日本語で楽しく参加できる体験型ワークショップを企画しています。「どんなに小さいコミュニティであっても、親御さんや知り合いの方々に『先生』になってもらって気軽に企画ができるんですよ」と上野さん。「みんなにとって負担にならない程度と頻度」で続けていくことをモットーにしているそうです。これまでの企画についてご紹介いただきました。(つなぐ編集部)
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子供たちが成長し、学校の勉強や習いごとが増えるなかで、楽しく自然に日本語に触れる機会を増やすにはどうしたらよいだろうか、と模索していました。新しいことやワクワクすることに触れ、夢中で取り組むなかで、それが、たまたま日本語で行われるのであれば、きっと無理なく言葉や表現が身に付いていくと思ったからです。
地域に住むみなさんと話すうちに、子供たちの親自身、それぞれが幅広い趣味を持っていたり、職種についていることに気づきました。この身近にいる子供たちの親や周囲の知人たちが先生役となり、それぞれの得意とするトピックを、子供たち向けにインタラクティブに企画にしていくのはどうだろうかと考えました。子供たちにとっては、毎回、違うトピックで違う「先生」、そして自分の親以外の大人の話し方や普段は馴染みのないテーマに接し、そのテーマだからこそ使われる新鮮な単語や表現に触れることができます。そんな意図で始めたのが、この体験型ワークショップのシリーズ企画です。そして協力者を募っていたら、あっという間に豊富な企画トピックが集まりました。
🐝これまで、こんな企画をしました!
・スケートボード体験
・野球ワークショップ
・Grotrian Steinwegピアノ工場見学&調律体験
・カヌーで川をきれいにする
・養蜂家でプチ採蜜体験
・SCRATCHでプログラミング体験
・ビデオワークショップ
・ジャグリングとポイ体験
・Bollmann-Bildkarten-Verlagの地図工場見学
🐝今後は、こんな企画を予定しています
スケッチワークショップ、手作りうどん体験、サッカートレーニング体験、写真ワークショップ、音楽ジャムセッション、弓道体験、Leipniz-Institut für Bildungsmedien | Georg-Eckert-Institutで学ぶ!世界各地の歴史教科書を比較してみる、・・・。
それでは、これまで実践した企画の中から二つ紹介します。
🐝ピアノ工場で調律体験
ブラウンシュバイク発祥の高級ピアノメーカーの工場を訪問し、Grotrian Steinweg社で整音師(Intoneur)をされている中島仁さんに、工場の案内をしていただきました。ピアノがどのようにつくられ、組み立てられ、整音されて完成するかの過程を見学しました。
その後、子供たちが調律体験!ピアノのチューニングピンに、チューニングハンマーをセットして、それを動かしながら音のうねりをなくしたり、音の高さの調節にチャレンジ。みんな、試してはみるけれど、なかなか感触をつかむのは容易ではない様子。やってみて、「ピアノのけんばんじゃないところを見て触るのがおもしろかった」と率直な感想も。最後は、様々な種類のピアノを自由に弾き比べながら、大人も子供も楽しみました。
🐝養蜂家で採蜜にトライ!
ウォルフスブルクにお住まいの浅野ヴィアト家を訪問しました。アルブレヒト・ヴィアトさんのご実家は、何世代にも渡って、趣味で養蜂を手がけている養蜂家です。まず、養蜂場を訪問し、蜜蜂の生態や巣箱の仕組みについてお話しいただきました。その後、保護服を着た子供たちが、いざ挑戦!無数の蜜蜂を目の前に、ドキドキしながらも、言われた通りに落ち着いてブラシでゆっくり蜜蜂を巣枠から払い落とし、巣枠を箱に入れます。
次に、蜜が収納された巣枠を遠心分離器にかけ、最後は、樽にたまった金色に光り輝くハチミツを、瓶いっぱいに詰めて、持ち帰らせていただきました。 普段、食べているハチミツがどのように作られ、どんな経緯を経て食卓に出るのか、自然と人間との共同作業で作り出すハチミツづくりを見て聞いて実践した子供たちは、きっと一生忘れない、甘い体験になったことでしょう。
その後、あるお母さんからは、「これまで、ハチを見ると怖がっていた息子は、この体験の後から、ハチを恐れることがなくなりました。」との嬉しく頼もしいお言葉。
これらの企画は、ブラウンシュバイクや近郊で行われるため、自分たちが住む地域について学ぶ機会にもなります。開催される場所が、毎回変わることも、変化があり、飽きない秘訣でもあります。さらに、自分の親の仕事や趣味を超えた世界を垣間見れる、社会勉強であり、職業体験にもなっています。
🐝子供たちが、先生となる日
理想は、いつか、子供たち自身が、先生役となり、同世代の仲間に向けて、自分の得意な「何か」について日本語で説明したり、披露したり、教えたりしながら、アウトプットし、自ら企画をする側に立つことです。たとえば、マジックトリックを趣味としている子が、自分の得意なトリックを披露し、その仕掛けを教えながら、みんなでそのトリックに挑戦してみる、など。いずれ、子供が主体となった企画シリーズに発展していけたら頼もしいなあと密かに思い描いています。
🐝親子クラブが、「仲間づくりの場」となる日
日本人とドイツ人の両親など、国際結婚の家庭で育つ子供たち。あるいは、日本人家庭だけど、生まれも育ちもドイツという子供たち。いずれ、彼らが大きくなって、自分と同じ境遇の友達がまわりにいることの大切さ、ありがたさを感じるときが来るかもしれません。多文化、多言語の環境で育った筆者自身、自分は社会のどこに属するのだろうか、と悩んだ時期もあります。そういった、迷いや葛藤のなかで、自分と似た境遇の仲間がいることは、常に心の支えでした。この親子クラブが筆者にとってそういう場であるように、いつか子どもたちにとっても、「理解し合える仲間づくりの場」となる日がくるかもしれません。
【写真提供】筆者(上から順に)
1)巣枠を箱に入れる/2)調律体験/3)ピアノの弾き比べ/4)ブラシで蜂を払い落とす
5)巣枠を遠心分離機に入れる/6)ハチミツを瓶に入れる/7)みんなで保護服着用!
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上野フックス玲 (UENO-FUCHS Rei)
12歳までの子供時代を米国ジョージア州のアトランタで過ごす。中学校から東京へ移住。日英の両言語で育ち、日本と米国、両文化の視点や価値観を通して育つ。2005年より国際交流NGO「ピースボート」で、企画コーディネーターとして「地球一周の船旅」を7回経験。現在は、ドイツ人の夫と息子とドイツ北部のブラウンシュバイクに在住。日本とドイツの両文化にルーツを持つ子供たちの地域の親仲間とともに、2012年に「BraWo! 日本 – 親子クラブ」を立ち上げる。世界各地に寄港するピースボートの寄港地の運営を行う傍ら、子供たち向けに日本語のワークショップを企画・運営。
『紛争、貧困、環境破壊をなくすために世界の子どもたちが語る20のヒント―子どもが主役で未来をつくる』(合同出版)への寄稿記事:『アメリカ―銃社会と若者たち』