2024年3月31日
【KANEGAE Naomi】今回は、デュッセルドルフで出自語教育(Unterricht in der Herkunftssprache)日本語クラスを担当している鐘ヶ江直美さんにインタビューをしました!
◆「ちょっとみんなにシェアしたい」教室での活動を教えてください!
私のクラスでは、行事や季節についての学習を大切にしているんですが、五感を使って、なおかつ年間行事に合うようなもので、家でも取り組めるものとして、12月に入る前の週に「アドベンツ」をテーマに蜜ろうシートを使った活動学習をしました。ろうそくデコレーションは、誰にでもやりやすくて、どんな年齢でも楽しめる活動です。ただ作るだけではなくて、活動の前に「どうしてこういう活動をするのかなあ」という導入をして、意味を考えたりやり方を教えたりした上で、みんなでやってみました。
◆どんな風に作るんですか?
ろうそくは、それぞれ子どもたちが持って来ます。そして、自分の手で蜜ろうシートを温めて、形に切ったりこねたりまるめたり・・・と、ろうそくに貼って絵づけをしていきます。ただし、ろうそくにもいろんな大きさ、太さがあるので、それをどんな風に使うか、家族との対話の宿題を出しておくんです。実際に活動の前と後にはこんな宿題を出しました。
〈活動の前〉
「家族でどんなろうそくを必要とするか話してください。例えば、太いろうそくで食卓の真ん中において、みんなで食事を囲む時に置くものを作るのか、はたまた、リビングに置くのか。家族でイメージを話して決めてきてください。」
〈活動の後 〉
「お家の人にどんな風に、どんな意味で、どんな気持ちで絵づけしたのか、どうしてこの色にしたのかを伝えてください。どうしてそんなイメージが浮かんだのかな。」
「火を灯してみて、家族で囲んで、話してください。火の明るさを見たり、ろうそくの匂いを嗅いだりしてみてください。」
◆実際にやってみていかがでしたか?子どもたちはどんな様子でしたか?
ただその日、作って終わるのではなくて、その期間ずっとそのろうそくを見て火を灯して、お母さんもお父さんもみんなで一緒に過ごして、時間を共有できるので、とっても良かったなと思っています。
そして、手先を使って温めながら形を作る蜜ろうシートは、それぞれの手の感触や温度を感じながらやれる五感を使った大切な活動の一つだと改めて思いました。出自語クラスは導入や展開も全て日本語なのですが、子どもたち自身が感じながら作っていくと、「手で伸ばす」、「色が混じる」、「火をともす」、そういう言葉を活動の中から知っていきます。本当にやってみるのが大事なんです。蜜ろうシートを手で温めたり、本当にろうそくの臭いを嗅いだりしますよね。蜜ろうは、温めると良い匂いがしてきたり、手が冷たいとつかなかったりもします。「先生、全然つきません」「じゃあね、こうやって、まず手で温めるんだよ。伸ばしてごらん」「あ、ついた!」「ほらできたね」というやり取りが、そこで生まれます。こんな風に、子どもたちのできることがどんどん広がっていくと、言葉の葉っぱってどんどん増えていくんですよね。たとえそれが小さな葉っぱでも、ほんのちょっと出るだけでも、時間をかけて、つながっていって、増えていったらそれでいいと思っています。
【親子で楽しもう!蜜ろうシートろうそくデコレーションはバリエーション豊富!】
蜜ろうシートで作るろうそくデコレーションは、お家時間にお子さんと様々なバリエーションで行えるお勧めの手作業の一つです。春・夏など、親子で季節ごとに話しながら絵を考えたり、ろうそくの種類や色を決めたりしてもいいですね。私には8歳の娘がいるのですが、クリスマスが終わった冬休みに、さっそく蜜ろうシートを使った春のろうそくデコレーションをしました。楽しいクリスマスも終わって、暗くて寒い時間に、春がきたら・・・・と、その喜びや待ち遠しさ、春にしたいことを話しながら絵を考えて、季節に見られる草や花・虫などをドイツ語の図鑑を見ながら作ります。ドイツ語の植物の名前を日本語で言ったり、ドイツ語では知っているけど、日本語ではなんだろう?はんたいにドイツ語では?と、興味や関心が広がっていくのが見られました。二つの言語の世界を行ったり来たりしながら行う手作業は、楽しく親子で遊んで学べる時間です。ろうそくには、ドイツのおじいちゃんやお父さんの好きな草花と自分の好きな小動物、日本の桜などがデコレーションされました。そんな思いがたくさんつまったろうそくに火が灯ると、家族みんなで囲んで笑顔になり、話に花が咲きます。
◆親子で何かをやりたいと思っている方へのメッセージをお願いします!
今回紹介した活動は、この地で生きる子どもたちを結ぶ一つの活動だと思っています。「そうかクリスマスだよね、アドベンツ週間が始まるね、その時に灯すろうそくをみんなで作るんだ」という風に、なぜ蜜ろうシートで絵づけをするのか、子どもたちも活動の中で気づいていきました。そこには家族が集まって、これを作ったことで日本語話者じゃない家族にも、
鐘ヶ江 直美 (Kanegae-Montag, Naomi)
音楽業界で働きながら、長年の夢であった子どもと携わることのできる「教育」の勉強を開始。演奏家と学生という二足の草鞋を履きながら、日本の教育大学を卒業。その後、念願の教育者へ転向。ドイツと日本の懸け橋となるべく二国間の教育を結んだ合科的授業を展開中。モットーは、“笑う門には福来る!”大好きな子どもたちが笑顔になり、一緒に学び合う友人と集える場所を目指して日々奮闘中。デュッセルドルフ市出自語教育日本語クラス講師、デュースブルク日本語学校でんでんむし理事会メンバー兼講師も担当