2022年11月5日
【AZUMA Kentaro】
「もういちどきみと旅に出よう」
このフレーズ、ご存知ですか?
これは宮崎駿の『天空の城ラピュタ』の16年後の世界をイメージして描かれた「君をつれて」という歌の詞の一部です。大人になったパズーとシータはどうしているのでしょうね。
本の世界には、このように想像の翼を広げれば、どこまでも飛んでいけるというすばらしさがあります。
子どもの頃、私はたくさんの本を読んでもらい、自分でも読みました。
母や父、祖父母に本を読んでもらいながら、「こぐまちゃんのホットケーキってどんな味なんやろ?」、「どろんこになってもうたハリーは家に入れてもらえるんかなあ?」、「エルマーみたいに竜に乗って飛んだら気持ちええんやろうなあ」と想像の翼をバタバタさせていた子どもでした。
小学校に上がってからは、学校の先生に加えて、ファーブル先生やシートン先生が様々なことを教えてくれ、実際の経験と本で得た知識を「ごちゃまぜ」にして大きくなったように思います。
幸い、我が家では好きなだけ本を読ませてくれたので、自分の中の世界はどんどん広がりました。残念ながら、ファミコンやおもちゃはなかなか買ってもらえませんでしたが…。
さて、そんな私も8年前に父親になりました。
まずは、添い寝をしながら、本を読みました。わかっているのかいないのか、息子は目をキラキラさせて聴いていました。首がすわって、ハイハイができる様になった頃から、胡座をかいた私の膝の上は息子の特等席になりました。歩けるようになると、特等席への持ち込みが増えました。
息子の成長に合わせて、我が家の本棚も充実してきました。私が本を選ぶ時のポイントは3つです。
1.子どもの時に読んでおもしろかった本
2.子どもの時に読みたかったのに読む機会がなかった本
3.息子が読みたがった本、鉄道や昆虫など関心がありそうな本
子どものリクエストが3番目なんてひどいじゃないか!とお叱りを受けそうですが、子どもと私では本の世界でのキャリアが違います。まずはコンシェルジュの案内を受けて経験を積んでほしいと思っています。
おかげで、おさるのジョージやがらがらどん、エルマーに再会できましたし、彼らを息子に紹介することもできました。息子が焼いてくれた「こぐまちゃんのホットケーキ」や「ワニくんのアップルパイ」を食べるなんて僥倖にも恵まれました。また、残念ながら、子どもの時に参加しそこねたドリトル先生の冒険にも40を過ぎて行くことができましたし、あの頃はなかったパンダ銭湯にも行けました。ドイツに来てからは、モモやホッツェンプロッツの物語を現地で味わうなんて贅沢な体験もできました。子鉄の息子が大好きな電車の本は、それこそぼろぼろになるまで読み、妻と私が望むと望まざるとにかかわらず鉄道関連の知識が増えることとなりました。
うれしいことに、息子も本好きになってくれたようで、小学校の図書館で本を借りて来てはリビングで読みふけり、毎晩寝る前の読み聞かせも日課となっています。
この本、おもろいねんで!お父ちゃんが子どもの時に読んだやつやねん。
この誘いに応じてもらえる間は、この旅を楽しみながら続けていきたいと思います。
でも、そのうち彼も「自分の本の世界」を進むことでしょう。それを見守るのも、時どき参加させてもらうのも楽しみでなりません。
福音館書店『エルマーの冒険』
R.S.ガネット作/わたなべしげお訳/R.Ch.ガネット絵
東健太郎(AZUMA Kentaro)
国際交流基金ケルン日本文化会館 日本語教育アドバイザー。専門は日本語教育、eラーニング、多読。2021年より現職。渡独前は、国際交流基金関西国際センターにて、eラーニング教材の開発・運用に携わる。過去に中東のカタールやオランダ、マレーシアにおいて日本語教育に携わってきた。趣味はトレイルランニングで、ドイツでもウルトラマラソンのレースに参加している。将来、息子(8歳)と100マイルレースに出場するのが目標。主著書に『カタールで日本語』がある。大阪市出身。
子どものことばの成長を見守るみなさんにお勧めしたい本:『ちいさい言語学者の冒険 子どもに学ぶことばの秘密』(岩波科学ライブラリー)広瀬友紀
【2つのリレー質問】
① すばり一言、本は私にとって?
どこでもドア
② 記憶に残っている子供時代の一冊は?
いっぱいありすぎて選ぶのが難しいですが、あえて選ぶのであれば『エルマーのぼうけん』です。親子ともどもハマって、何度読んだかわかりません。